夢中夢
FEATURE 004

地獄の底から現われし悪魔か、はたまた天から舞い降りた天使か。"ヒーリング・ミュージック・フロム・ヘル"とも評されるように、切迫感に満ちたウメキをあげる轟音と子守唄のように安らぎに満ちた穏やかな空間を行き来する絶妙なバランスと、常に壮絶な世界観を背景に持つ大阪の6人組バンド、夢中夢。クラシック、アンビエント、ヘヴィー・メタル、ハードコア、ミニマル・ミュージック、ポスト・ロックなどなど、様々な音楽的ジャンルを完全ハイブリッドさせつつ、ドラマティカルに描き出されるそのサウンド・スケープはまさに極上の「美」を誇っています。関西の老舗レーベル、GYUUNE CASSETTEよりリリースされた待望の1stアルバム『夢中夢』や、今までにオシリペンペンズ、にせんねんもんだい、Melt Banana、Joseph Nothingなどが参加している自主企画「登場人物は皆狂ってた」など常に気になる活動を行っている彼らに気になるアレコレを聞いてみました!とにかくこの夢中夢、一度聴いたらもう抜け出せませんよ。





HOMETOWN
Osaka, JP

MEMBER
Ryota Yoda
Junpei Suda
Hachisu-Noit
Yuko Ikenaga
Chiaki Okamoto
Yuji Hayashi

LABEL
GYUUNE CASSETTE (JP)

WEB
夢中夢
夢中夢 myspace

まず基本的なことからお聞きしたいのですが、夢中夢はどのようにして結成され、今のような形態になったのでしょうか?

依田涼太(以下Y):元々僕が一人で宅レコなどして作曲していた曲を生で演奏したくて、大学時代に在籍していた軽音部で気の合うメンバーで結成しました。初期はギター、ドラム、ベース、キーボード、男性ギター・ヴォーカルといった編成でした。その後メンバーチェンジを繰り返して現在のギター、ドラム、女性ヴォーカル、ピアノ、ヴァイオリン、ベースの6人編成に至ります。活動初期からのメンバーは僕とドラムの須田の二人です。

バンド名や曲のタイトルなどに多く漢字が使われていますね。とてもインパクトがあって良いと思います!漢字を使うことで何か意図するものはありますか?

Y:曲に英語のタイトルをつけるのが恥ずかしいとかくだらない理由もあるのですが、語感にしても日本語の方が好きだし、漢字特有の哀愁が好きなんです。漢字の羅列の方が曲の持つ意味を謎めいたものに感じさせる力があるんじゃないかなあと思ってます。

ちなみにどのような意味を込めて夢中夢というバンド名に選んだのでしょうか?

Y:夢中夢がテーマとして追い続けたいのは夢と現実の境目が曖昧になる感覚を音楽として表現していきたいと思ってます。そういう意味を込めて「夢中夢」というバンド名をつけました。表現としてはまだまだ未熟だしまだ成長段階ですが。このテーマ自体は特に珍しいテーマでもないですが、これらをテーマとするのは小さい頃に見た「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」の影響が大きいです(笑)。映画にはよく影響を受けるのですが「ツィゴイネルワイゼン」、「ロストハイウェイ」、「イノセンス」といった夢、現実、存在が曖昧になる世界観をもった作品が好きです。

2006年10月に待望の1stアルバム『夢中夢』がリリースされましたね。リリース後の反響はいかがですか?

Y:自分達ではよくわからないこともありますが、まず目に見えて変わったのは昔と比べて地方からのオファーが増えてきました。とてもうれしいと感じています。さらには海外からオファーが来たことあります(笑)。地方からの誘いは昔からもあったのですがその頃はメンバーの事情で遠方での活動を控えてたのですが現在の編成になって遠方でのライブも多少融通が利くようになりました。さすがに海外はなかなか難しいですが(笑)。海外に流通はないので外国のこの手のマニアの方がmyspaceを聞いて知ってくれたりすると思うのですが(笑)。もっと多くの人に聞いて欲しいのでいつか海外にも流通ルートが持てたらいいなと思ってます。

「ヒーリング・ミュージック・フロム・ヘル」と評されるように地獄のうめきのような壮絶さと子守唄のような癒しの静寂さの絶妙なバランスを持った素晴らしい作品だと思います。こう評されることについてはどう思いますか?

Y:曲にもよりますが多くの場合は僕が原曲となる簡易的なデモを作ってそれをメンバーに渡して各々のパートを詰めてきてもらうといった方法で作曲をしています。セッションで曲をつくることはあまりないのですが「夢中夢」収録の曲では「鉄ノ花束」のみセッションでつくった曲です。

今作のアートワークは見事にアルバムの音を具現化した仕上がりになっていると思います。これはどなたが書かれたものなんですか?

Y:福井県に在住の画家である池田さやかさんにアートワークをお願いしました。(ホームページはまだないみたいなのでmixiのIDです。)夢中夢としても今回のアルバムのテーマとして思い描いてた世界にぴったりはまるジャケットを描いていただいて僕も初めて見たときにびっくりしました。集団の夢によって形成される「楽園」とひとりひとりの存在の曖昧さが絵の中に表現されてると思います。

今作はあふりらんぽやミドリのリリースでも知られるギューン・カセットからのリリースとなったわけですが、その経緯を教えてください。

Y:ギューン・カセットは関西アンダーグラウンドを代表するレーベルですしリリースするバンドも好きなバンドが多く大好きなレーベルでした。特にギューンからリリースしたバンドではIndian No Echo Sine Bine No!というバンドが大好きでもう解散しましたが大きな影響を受けたバンドでした。そういう憧れもあっていつかギューンからリリースしたいなと思ってたのですが昔オーナーの須原さんとベアーズで対バンした時にデモCDを渡したのがのちのリリースのきっかけにつながっていたのだと思います。そのイベントは70年代ロック・トリビュートというイベントだったのですが、須原さんが夢中夢がカヴァーしたジョン・レノンの「Love」を聞いてリリースしたいなと思ってくれたとのことです。

主な活動場所である大阪の音楽シーンはいかがですか?

Y:周りには面白いことをしてるバンドが多く、刺激をよく受けます。ただ演奏する側は盛り上がっていても大阪のシーンはまだ多くの人に知られていないのが現状です。もっと多くの人がこのシーンに興味をもってもらえるようなアピールの仕方が必要だと思います。それが何なのか同世代のバンドたちの間でもよく議論になります。あと同世代のバンドたちがどんどん解散していくのは仕方ないことなんだけど寂しいな思います。続けることは本当に難しいことですからね。

大阪といえば夢中夢もそうですが、他の地域にはない強い個性を持ったバンドが本当に多く存在していると思います。これは何故だと思いますか?

Y:それは何故かというとわからないのですが個人的には難波ベアーズの存在はやっぱり大きかったです。あと本当の意味で個性的なバンドとなると関西といえど限られてくるとは思います。中には海外のシーンである音楽をほぼそのまま自分達のスタイルとしてある意味コピーバンドのような表現方法に労力を注いでるような人も多いとは思います。でもそういった真似事に労力を注ぐよりも自分自身のスタイルを見つけることに労力を注ぐバンドが個性的に進化していくのじゃないかなあと思います。それは決して他にない音楽という意味ではなくて、自分らしい音楽と言えばいいのかな?自分達らしい音楽を奏でるバンドという意味ではペンペンズなんかその典型であり鏡のようなバンドだと思います。彼らもいろんな影響を受けてきてると思いますが、その中でストイックに自分達のスタイルを模索して結果的に彼らの音楽は唯一無二になったのだと思います。個性的なバンドといえど皆何かしらいろんな音楽に影響を受けてます。僕自身活動を続けていく中で夢中夢としての表現の仕方を模索してきました。デモ音源『灰の日』からアルバム『夢中夢』を作るまでの間に少しづつ夢中夢らしいスタイルが何なのかわかってきました。次回作はさらにこのスタイルの延長線上を目指したいと思っています。

オススメの大阪のバンドがいましたら教えてください。

Y:夢中夢のサポート・ベーシストのハヤシ君率いる「ときめき☆ジャンボジャンボ」はテクニックも楽曲もすばらしいですよ。夢中夢のサポートヴァイオリニストの岡本さんがベーシストとして参加するドブラノツもヘヴィさ、ポップさ、ある種のシニカルさも兼ね備えたすばらしいロックバンドです。 他にも個人的にはオシリペンペンズ、ゆーきゃん、FLUID、溺れたエビの検死報告書、Sifnos、ミドリ、Yasushi Yoshida、イデストロイド、三条ハンソンなどなど挙げればキリがないです。またヴォーカルの蓮は一番刺激を受ける大阪のアーティストに自身と同い年のアーティスト北村早樹子さんを挙げています。

様々な音楽を聴いていらっしゃると思うのですが、フェイバリット・アーティストは誰ですか?

依田涼太(ギター):久石譲、J.S. BACH、Steve Reich、The Emperor、Iron Maiden、Goblin、Godspeed You! Black Emperor、U2、The Smiths、Indian No Echo Sine Bine No!

蓮ノ絲(ヴォーカル、ポエトリー):Dead Can Dance、camille、Lhasa、Godspeed You! Black Emperor、久石譲、ゲルニカ、SUGIZO、芸能山城組、バッハ、ラフマニノフ、ピアソラ

池永裕子(キーボード):ショパン、クラムボン、倉橋ヨエコ、Ben Folds

須田純平(ドラム): Beatles、John Mayer、Herbie Hancock、Carlos Santana、塩谷哲、Leon Russell、Christina Aguilera

岡本千明(ヴァイオリン):Melvins、Tool、Moonlight、Waltari、Sifnos、Guns N' Roses、中島みゆき、THE BLUE HEARTS、Within Temptation

夢中夢以外でのメンバーそれぞれの音楽活動があれば教えてください。

依田涼太
・DJベルゼバブ(悪魔コスプレのパフォーマンス系メタルDJ)
・恋愛研究会。(主にしゃべりとカラオケを中心に活動)
・以下は最近活動していないものです。
・22歳ノ私(元ミドリの劔氏と元々やっていたアシッド・フォーク・バンド)
・私たちの群れ(Voハチス嬢と共に活動していた篳篥、龍笛、笙といった雅楽器をフィーチャーした音響雅楽バンド)
・ゆーきゃん、あらかじめ決められた恋人たちへでのサポート・ギタリスト

蓮ノ絲
・青色大麻虫(プログラマー曽根涼輔、朗読・唄ハチスノイトの二人ユニット。 寓話の絵本の中の世界を舞台の上に作っています。)
・私たちの群れ(上記と同じく依田と共に結成した音響雅楽ユニット)
・はちすむじか(映糸のムジカとのインプロツインヴォーカルデュオ)
・トルバトール(歌、ディジュ、コントラバス、ジャンベ、カリンバ、馬頭琴によるインプロ)

須田純平
・キング・クリムゾンのコピー・バンド

池永裕子
・インド部(不定期活動のポスト・ロック・バンド)
・杉本ニートクラブ(主催のぷう吉氏が率いるサントラ的な楽曲中心のライブから生演奏付きアヴァンギャルド人形劇といった活動をするユニット)

ハヤシユウジ
・ときめき☆ジャンボジャンボ(ギター、ベース、ピアノ、ドラムの4ピースの踊れるプログレ・ポスト・ロック・バンド。ハヤシのメイン・バンド)

岡本千明
・ドブラノツ(岡本がBaで参加するメイン・バンド。ギター・ヴォーカル、ベース、ドラムの3ピース・ロック・バンド)

残念ながらまだ夢中夢のライブを見たことがありません。アルバムを聴くかぎり、ライブはとてつもないことになると勝手に想像しているのですが(笑)、どのような感じでしょうか?

Y:ライブは生モノなのでいつも上手くいくとは限りません。ライブは良い時と悪い時の差が激しいです(苦笑)。大好きなバンドIndian No Echo Sine Bine No!もそういうことが多く駄目なときはグダグダでしたがピースがはまった時のライブはすさまじかったです。彼らと僕らのライブはまた違いますが僕達の場合はピースがはまった時にお客さんが夢の向こう側に連れ去られてしまうほどの開放感を感じてもらえるようなライブをしたいなあと課題にしてます。精進して毎度のライブでお客さん全員がそう感じるようなライブができるようになることが理想ですね。ライブの最後はアルバム『夢中夢』収録の「楽園」を演奏して終わることが多いです。「楽園」は夢中夢の活動以前から原曲デモがあった最も古い曲のひとつで個人的な思いいれも強いですし、夢中夢らしい曲だと思います。

いつか新潟でライヴを見てみたいと熱望しています!最後に新潟の印象とこれからの活動を教えてください!

Y:ありがとうございます! 新潟には一度も行ったことがないのですが、自分の周りを見たら親友の劔樹人や元越後屋のギタリスト桜井氏と面白い人は新潟県出身です。同時に才能がある人が多い印象があります。漫画家でも高橋留美子さん、赤塚不二夫さん、えんどコイチさんといった才能ある人を多く輩出されてますし。食べ物も美味しそうですよね。いつか新潟に行きたいです!



INTERVIEW in April 2007
TEXT by Masato Hoshino