CLOSER
FEATURE 008

優れた音楽が日々産声をあげているもなかなか私たちの耳元に届く機会の少ない日本のインディー・シーンの難題を打破するべく、5組のアーティストが結集し、立ち上がった団体CLOSER(クローサー)。春に行われた2会場同時開催で行われたイベント「CLOSER Vol.1」を大成功に終わらせたクローサーが、新たなキュレーター3組を加え、今度は東名阪で行われる「CLOSER Vol.2」開催に向けて動いている。無料コンピCDを製作、配布し、それを手にした音楽ファンがイベントに足を運び、生きたインディー・シーンに触れる。そんな大切なきっかけを投げかけるクローサーを代表して、Vol.1からのキュレーターであるFORT WAYNEが答えてくれました。


HOMETOWN
Tokyo / Osaka / Nagoya / Aomori, JAPAN

CURATOR
CRYV
FORT WAYNE
HENRYTENNIS
NEONSIGN
OAQK
OVUM
SHORT FILM NO.9
YUCCA

WEB
CLOSER
CLOSER myspace
まずCLOSERを立ち上げた経緯を教えてください。

日本には、洋楽を聴いて育った素晴らしいバンドやアーティストが沢山いるのに、あまり知られていないし、知る機会があまりにも少ないと思ったんです。USやUKインディーのようにしっかりとした土壌も無いし。ライブをただ続けて行っても、ライブに普段行かない洋楽好きのリスナーには知ってもらえない。だったらバンド側から聴く側にアプローチしていくのが1番効果的なのではないかと思って、cryv、Yucca、oaqk、ovum、FORT WAYNEでCLOSERをやってみようということになりました。

CLOSERは「無料でコンピレーションCDを製作・配布し、イベントを告知する」、どのようにしてこのアイデアは生まれたのでしょうか?

cryvが去年の8月にミニ・アルバムを出したときにサンプルCDをHMVで無料配布して、その時1ヶ月で1000枚くらいなくなって、それを聴いてライブに来てくれた人がいたそうなんです。それが最初のきっかけですね。無料だったら、邦楽をあまり聴かない人でも「聴いてやってもいいか」っていう気になると思うし、それで気に入ったバンドがいれば、「ライブに行ってみようかな」っていう風に思ってもらえるかもしれない。それで、長く聴いてもらうためにCDRではなくきちんとプレスして、ライナーも星野さんに書いて頂き、ジャケットもデザイナーさんにお願いして、ただの寄せ集めコンピではなく、未発表曲を収録して。その辺りからも本気だっていうことが手に取った方に伝われば良いなと思ってます。

どのような意味を込めて「CLOSER」と名付けたのでしょうか?

言葉の通り、もっと身近にインディーの音楽、バンド、イベントを感じてもらいたいと思ったからです。

現在の日本のインディー・ミュージック・シーンについてはどのように感じていますか?

正直これ以上期待出来ないなと思っていました。要はお金なんです、なんだかんだ言っても。バンドもイベンターも本当にギリギリのところでやってるから、どれだけ頑張って良いライブをやっても、どれだけ良い作品を作っても、出る一方で、全く収入がなければ、正直モチベーションは維持出来ないと思います。「じゃあ、やめろ」って言われたことがあるけど、レーベルに関して言えば、私たちはちゃんと仕事してるのかわからないレーベルの社員を食べさせるために音楽をやってるわけじゃない。自分の命に変えても大切な自分の作品を邪険に扱われることほど悲しいことは無いですよね。きちんと自分らのために動いてくれるレーベルも沢山あるけど、動かないし、払うものも払わないようなレーベルも結構ありますからね。話を聞いてると。おかしいと思ったらおかしいって言うべきだし、自分らのためにならないと思ったら、辞めて自分に合ったレーベルを探せば良いだけの話なんです。なければ自分で出せば良いし。日本人ってお金のことをはっきり言うのを躊躇するところがあるから余計ダメなんですよね。お金の面がきっちりオープンにされてないと本当の信頼関係なんて築けないと私は思います。 レーベルやライブハウスと、バンドは対等でないとおかしいんです。「やらせてやってる」、「出してやってる」っていう考えはおかしいんです。だって彼らだって、私たちがいないと食べていけないわけだし。もちろん私たちも彼らがいないとやっていけない。だから対等でないとおかしい。長い目で見たら、シーンを育てて行くっていう気持ちがお互いにないと、結局は自分で自分の首を閉めてるようなものだと思います。でもひとつのバンドではなかなか行動に移せないし、言葉も発せない。だからみんなでCLOSERを始めたっていうのも1つあると私は思います。でもCLOSERを始めてから、配布や宣伝に協力して下さったCDショップの店員さんや友人、各雑誌や各サイトのメディアの方やライターさんたち、各ライブハウスの方たちや、各レーベルの方たちのご好意や励ましの声に触れて、何より応援してくれるファンの方たちの声を聞いて、日本のインディシーンもまだまだ捨てたもんじゃないなって思えたし、音楽を続けてて良かったなって思えました。

CLOSERが考える理想の"インディー・シーンの在り方"はズバリどのようなものだと思いますか?

まず、やる側が楽しんでやることです。それが出来ないなら、どうしたら出来るようになるのか、それぞれが頭を使って、足を使って動かなければいけないと思います。今の状況を打破したいなら今までと同じことをやっていてはダメなわけだし。だから、周りにも協力してもらいながら、言うことは言う。その代わり自分たちもそれなりの努力をしなければいけない。良いライブをし続けていく、良い作品を作り続けるというのが大前提だと思うので。また、目の前のことだけを見るのではなくて、自分たちが10年後、どうなっていたいかっていうことを考えて行動しなければならないと思います。そして、閉鎖的にならないことだと思います。身内だけで楽しんでいては、シーン全体の活性には繋がらないし、それがめぐりめぐって自分のところに痛手となって返ってくるんだし。CLOSERも初めは仲の良いバンドだけで始めたけど、それは、初めはその方が動きやすいし、言いたいことも言い合えるだろうと思ったからで。これがどんどん大きな輪になって、1つの大きな動きになるのを私たちは望んでいます。

春に開催されたVol.1のイベントはいかがでしたか?

おかげさまで満員でした!本当に大盛況で、オープン前、行列が出来てるのを見たときは「すげえ!」って思いました。普段ライブに行かない人たちも沢山来てくれて、本当に嬉しかったです。やってる側は学際みたいで凄く楽しかったし。それもお客さんたちに伝わってたような気がします。本当にやって良かったって思ったし、これは続けていかなきゃいけないな、って思いました

その後の反響はいかがでしたか?

反響は大きかったです。そこで初めて私のライブを見てくれたお客さんから、沢山メールをもらったし、「初めてライブに行ったんだけど凄く楽しかったです」っていうメールも沢山もらって。私を見に来てくれたお客さんが、他のバンドにも興味を持ってくれたり。バンド同士や、お客さんとバンド、お客さん同士の繋がりが出来てて、良い出会いの場になってるんだなぁって実感しました。

今回はVol.2ということで従来の5組にプラスして3組のキュレーターが加わりました。キュレーターとして選んだ決め手はありましたか?

どのバンドもまず凄く私たちの意見に賛同してくれたことが一番だと思います。今回は配布枚数を多くしたいっていうのもあったんで、東京はhenrytennisさんに加わってもらって、手伝ってもらうことになりました。また、今回は大阪、名古屋でもCLOSERをやるということで、各地区で精力的に活動してるバンドさんにキュレーターになってもらった方が、心強いと思ったからです。その地区の素性はその地区のバンドさんがー番知っているし。大阪ではneonsignさん、名古屋ではshort film no.9さんにお願いすることにしました。

今後もキュレーターは増えていく予定ですか?

数が増えるかどうかはわからないですが、キュレーターはどんどん入れ替わって行きます。CLOSERは私たちだけのイベントではなく、インディーシーンを盛り上げ、またまだ知られてないバンドさんたちを知ってもらおうというのが根底にあるので。

当初ゲスト参加予定だったスエーデンのAerialが残念ながら急遽参加できなくなりましたが、これについてはいかがですか?

これは非常に残念でした。楽しみにして下さっていた方たちには大変申し訳なく思いますが、Aerialが私たちの意見に賛同してくれて、一緒にイベントを盛り上げようとしてくれたこと、そして、音源を提供してくれたことに心から感謝しています。そして、彼らの日本のファンが、私たちに興味を持ってくれていれば良いなぁって思います。Aerialは来れなくなってしまったけど、その分私たちも負けずに良いライブをやるので、これをきっかけに洋楽しか聴かない、ライブに普段行かない方にも来てもらえればなぁって思ってます。

今回は東名阪の3箇所での開催となりますが、今のお気持ちはいかがですか?

東京は前回と同様、今回も本当に素晴らしいバンドやアーティストが揃いました。なので、本当に見応えのある、楽しいイベントになると思うし、やる側もそのために頑張ってきたので、是非来て一緒に楽しんでもらいたいです! 大阪と名古屋に関しては、凄く楽しみな部分と不安な部分と両方あります。初めてなので。でも各地域の強力なバンドさんたちに出演してもらえるし、各地域のキュレーターも凄く頑張ってCLOSERを広めてきてくれたので、絶対成功すると思います!!なので是非近くにお住まいの方は遊びに行ってほしいなと思います。

開催地は今後も増えていくのでしょうか?個人的には新潟でも開催を望んでいます!

断言は出来ないけど、いろんな場所でやって行きたいと私は思っています。大きな都市だけがシーンの中心ではないですし、地方でも面白い地域は沢山あると思います。例えば、新潟や、山形とかで出来たら面白いんじゃないかと思うし。全国には沢山私たちと同じ悩みを抱えている人達が沢山いると思うので、そういう地方のバンドさんたちとも連携していかないと、日本全体のシーンの活性には繋がらないと思います。 でも、私はバンドだけじゃなく、私みたいに1人で宅録で作っているアーティストさんがもっと表に出てくるべきだって思っていて。ネットっていう手もあるけど、私はそろそろネットも限界が来てるんじゃないかなって思ってて。ひとつの手段としては有効だけど、それだけでは広がらない。私もそうだけど、ライブをやるにしても、やっぱり全部生でやれるバンドには敵わないなって思って、限界を感じてる人達も少なくないんじゃないかなぁ。でもクラブでやるような音楽でもないし、みたいな。エレクトロやブレイクビーツでもないし、みたいな。ま、これは単なる私の悩みなんですけど(笑)。そういう人達ととにかくまず話し合っていければ良いなぁって思ってるんです。

それでは最後にCLOSERを代表して一言お願いします。

本当に今まで応援、協力して下さった方たちのおかげで、またCLOSERを開催することが出来ます。それは本当に幸せなことだと思っています。いろんな問題もあるし、大変なこともありましたが、絶対に良いイベントにするので、是非遊びに来てもらいたいと思います。そして、CLOSERは今後もずっと続けていくつもりですので、今後ともCLOSERを宜しくお願い致します。



INTERVIEW in October 2007
TEXT by Masato Hoshino