COLORLIST
FEATURE 016

シカゴにおけるジャズ畑と音響/ポスト・ロック畑の垣根をゆるりと行き来するような、ハイ・センス、ハイ・クオリティを誇るインプロヴァイズド・ミュージックを展開して魅せるColorlist(カラーリスト)。数々のユニットに引っ張りダコなサックス奏者のCharles GorzcynskiとL'altraのドラマーとしても活躍中のCharles Rumbackと、偶然にもダブル・チャールズ(笑)なユニット。フリーでジャジーに刻むドラミングに、叙情的なサックスの音色がたゆたい、そこにサウンド・プロセッシングを取り入れた上質で心地よいオーガニック・サウンドの数々を生み出している彼らに、根掘り葉掘り聞いてみました。




HOMETOWN
Chicago, US

MEMBER
Charles Gorzcynski (CLARITY, SILENCES SUMIRE, SPINACH PRINCE, VIDEO GUM CULTURE, LEAF BIRD, LEAVES)
Charles Rumback (L'ALTRA, COSTA MUSIC, LEAF BIRD, LEAVES, THE HORSE'S HA)

LABEL
482 MUSIC (US)
OFF! (BE)

WEB
COLORLIST
COLORLIST myspace

VIDEO

Improvisations (1 of 2)


Improvisations (2 of 2)
まずメンバーの紹介をお願いします。

チャールズ・ゴルツィンスキー(以下CG):メンバーは僕ら2人だけ。僕はサックス、エレクトロニクス、ハーモニウム担当。あとは時々シンセも弾くし、このグループ向けにストリングスのアレンジをしたこともある。
チャールズ・ランバック(以下CR):僕はたいていはドラムをやってるんだけど、Colorlistではシンセサイザーや他の楽器をやることもあるね。

バンド結成時のコンセプトはいかがでしたか?

CG:僕らが一緒に即興でやりだしたのが6年前。その前は、ライヴ・ループとか、サックスの電子拡張をやったりしてたから、このバンドを始めるに当たって、僕はそういうアイディアを持ち込んだ。2人とも、個々にプレイヤーとして目指すところが明確にあって、それぞれが補完し合ったんだと思う。もちろん、しばらく一緒にやっていると、その考えも変化し、発展して、ひとつのアイディアにまとまってきた。その特殊なアイディアは言葉にしづらいんだけど、すごく具体的で重要なテーマを追っている感じだね。それか、そのテーマに追われてるのかも。

どのようにしてバンド名は名付けられたのでしょうか?

CR:どうして最終的にこの名前を選んだのかはわからない。1枚目のレコードに関わってくれた友達のマット・ガニョン、彼はListsっていう名前を提案してくれた。結局それはアルバムのタイトルに使ったんだけど、僕には少し冷たい感じがしたんだよね。でも、Colorlistっていう案は気に入った。温かい感じもするし、同時に哲学的でもある。僕らの音楽は、そういう「矛盾」を含んでいて・・・。2つの全く違う要素なんだけど、一緒になるとうまいこと作用する。分析的であると同時に、感情的でもある、そういう何かをこの音楽は含んでいるんだ。

どのようにして音楽を制作しているのでしょうか?

CG:自分自身に対する期待や、ハーモニー/メロディのプランとかはなるべく忘れて、ただ演奏を始める。即興音楽が通常たどるルート(組織性、無調性)の代わりに、メロディの断片をたどり、一連のメロディをループしてハーモニーを構築する。演奏を始めた途端、その楽曲がどこへ向かうべきかがすごくはっきりすることがよくあって、2人でそこを目指すんだ。正直なところ、僕らの音楽のいい所は、その目指すっていうところなんだと思う。何が起こるべきかを知って、その時点では完璧にこなすだけのスキルがあるとは限らないんだけど、とにかくトライする。そうやって未知の領域に入っていくんだよね。こういうふうに始めて、それから他の楽器やミュージシャンを入れてセッションの最も面白い部分に入っていくというレコーディングもある。音楽の骨組は常に即興だけど、構造的に聞こえるように努めている。
CR:というより、僕らの内部プロセスに既に存在している構造を認識して、それが姿を現すまで辛抱強く待つ、っていうのに近いかな。逆もまた正しいっていうことも時にはあるけど・・・。僕らのうちのどちらかによって、もう1人が全く違う方向に行ってしまうこともよくある。演奏後に、たった今やったばかりの音楽について話し合うと、片方はすごく良かったと思っているのに、もう1人はひどかったと思ってたこともしょっちゅうだよ!いろいろな事柄に左右されるんだ。僕らの気分、個々の演奏をどう感じたか、お客さんの反応、etc…。あと、僕らのパフォーマンスは、完全に即興か、そうでなくても輪郭は曖昧だ。僕らはただ習った曲を演奏しようとしているんじゃなく、本当に深く掘り下げていて、それはすごく感情的なプロセスなんだよ。何の苦もなくやれることもあるけどね。

どのような音楽に影響を受けてきたと思いますか?

CG:僕らは2人ともジャズ畑出身なんだけど、聞く音楽は幅広い。僕がすごく興味があるのは最近のECMやルネ・グラモフォンのレコード、モダン・エレクトロニック・ミュージック (全般、ダンス・ミュージックでもそうでなくても)モダン・クラシック、たくさんありすぎて言い尽くせないよね。いつも思うけど、Colorlistが、ファラオ・サンダースとスティーヴ・ライヒに負うところは大きい。
CR:チャールズに会ったとき、いいなと思ったのは、僕らは2人とも同じようなジャズのレコードを聴いてて、好きなソニック・ユースのレコードも同じだったってこと。そして、興味を持っていたのは、たいていの人が言う「ジャズ」の枠から大きくはみ出た音楽だったんだ。それによって、一緒に即興をやっていく上での一定の自由が生まれたんだと思う。その自由は、僕個人としてはそれまであまり経験したことがなかった。いわゆる「フリー」・インプロヴァイズド・ミュージックであっても、多くの場合、制約とか想定とかがかなり出てくるからね。

あなたがたの住んでいるシカゴでの音楽シーンはいかがですか?

CG:すごくいいよ。とてつもないプレイヤーでいっぱいの街だ。そのほとんどは地に足が着いていて、面白い、オリジナルな音楽を作って世に出そうと頑張っている。
CR:スケジューリングが、一番難しいところだよ。みんな忙しいし、CGが(次の質問で)言ったように、僕らはみんないろいろなグループで活動してる。音楽をやっている理由だってそれぞれだしね。シカゴのミュージシャンはたいてい、お互いにすごく協力的。マイク・リードのように、ミュージシャンが妥協なしに音楽を作り、それでお金を稼げるような機会を作ってくれている人も多いんだ。サウンドにすごく「シカゴ的」な何かを持ってるバンドも多いけど、これはその理由を説明するヒントになるんじゃないかな。

Colorlist以外の他のバンドでの活動はありますか?

CR:僕はいろんなバンドで活動してる。今だとVia TaniaやLeaf Birdとよく一緒にやってるね。L'altraとも一緒にプレイする。『Telepathic』 を& Records からリリースしたら、僕らはまた日本に行くよ。チャールズも僕も、L'altraのニュー・アルバムに客演してるんだ。彼らのツアーに何回か行く計画も立てつつ、自分自身の音楽もたくさん書いてるね。
CG:いくつかエレクトロニック ・プロジェクトを抱えてて、ここのところはIVI(ポスト・ダブステップのダンス・ミュージック)と一緒にやってる。あとはもっとアンビエントよりの音楽を、Clarity名義でレコーディングしてるね。最近カリフォルニアのオークランドに引っ越して、Colorlist以外の他のグループは全部やめた。ある意味うれしいんだ、スケジュールを空にして、重要なことに集中できるようになったから。そして僕にとっては、このグループが一番重要なんだ。

フェイバリット・アーティストを教えて頂けますか?

CG:最近聴いてるのは、アーヴ・ヘンリクセン、ジェイムズ・ブレイク、マウント・キンビー、ジャン・ジェリネック、テリー・ライリー、AFXの昔のレコード、ディノ・サルッツィ、アンドリュー・ヒル、ファラオ・サンダース、あとアル・グリーン。デイヴィッド・シルヴィアンの新譜も好きだね。
CR:多すぎて言えないよ!最近すごくインスパイアされてる人を挙げると・・・チャールズ・ゴルツィンスキー!と、タイラー・ビーチ、フレッド・ロンバーグホルム、ニック・マクリ。みんな友達で、彼らと定期的に一緒にやれるのは本当にラッキーだと思う。かなり好きなのはロン・マイルズ、クリステル・ウォーレン、ラテン・プレイボーイズ・・・。ドラマーに関して言えば、いつも聴くのはエルヴィン・ジョーンズだね。ジム・ケルマーとレヴォン・ヘルムも最近よく聴く。

日本についてはいかがですか?

CG:いつか行ってみたいね!
CR:日本は美しい国だ。2007年にCosta Musicで、2008年にはL'altraで行った。どちらの渡日時も、ラッキーなことに、マサトのExperimental Roomsのイベントで新潟のお寺で演奏ができたんだ。素晴らしい経験のひとつだよ。

好きな日本のアーティストはいますか?

CG:たくさんいるよ!池田亮司、コーネリアス、Mono、ツジコ・ノリコ、坂本龍一、竹村延和のレコード、ボアダムズ全般、またしても多すぎて名前を挙げきれない・・・。
CR:The Medium NecksとAsunaは大好きな2組だね。左起代(The Medium Necks)とAsunaはHelllっていう別バンドもやってて、すごくいい。僕らの友達の田中徳崇も、好きなドラマーだ。シカゴに住んでるときに出会ったんだけど、彼は今東京だね。

今後の予定を教えてください。

CG:ジョシュ・ユースティスとジョン・ヒューズと一緒にレコーディングしたニュー・アルバムの作業をしてるんだ。482 Musicからの最新リリース『A Square White Lie』 のプロモーションも続けてるよ。ライヴをもっと入れようと調整もしつつ、新しい音楽も進めている。
CR:CGが西海岸に行ってしまったから会うのは大変になるんだけど、そのおかげでより集中できるんじゃないかと思ってる。一緒にやる時間がこれまでになく限られてるからね。アイディアはたくさんあって、これが来年くらいにどうなっていくのかが楽しみだ。

それでは最後に日本のファンにひとことお願いします!

CR:すごく日本に行きたいよ!そのうちに行けることを願ってる。僕らの音楽を聴いてくれて本当にありがとう。



INTERVIEW in September 2010
TRANSLATED by Naoko Yamada
TEXT by Masato Hoshino