PAL
FEATURE 083

新潟でDJやトラックメーカーとして活動し、monotop-architektやiwwiwe.の一員としても活動の幅を持つ廣木勇人によるソロ・ユニットPAL(パル)。2016年4月に自身初の音源集『人の砂漠 〜Desert Of Human Being〜』の発表を行い、今年8月に早くも新作カセットテープ『Heimia / Calea』を新潟インディペンデント・レーベルHeliostructionよりリリース。今作では本人のライフワークでもある山登りや日常で採集された環境音や古いレコードのサンプリングとエレクトロニクスを掛け合わせ、楽曲毎に異なる質感とレフトフィールドな異空間サウンドを創出して魅せています。まるで未知なる音楽体験の旅に誘うような、楽曲毎に深く引きずり込まれる非常に興味深い作品です。そんな注目の新作について、そして間もなく開催されるER#26での出演についてなどお話をお伺いしました。是非ご覧下さい!




HOMETOWN
Niigata, JP

MEMBER
Hayato Hiroki (IWWIWE.)

LABEL
HELIOSTRUCTION (JP)

WEB
PAL
PAL soundcloud
MONOTOP-ARCHITEKT

VIDEO

Live at Solero, Niigata (2014)





experimental room #26



2017 10 14 SATURDAY

燕喜館

Open 17:00 / Start 17:30

Adv 3000JPY / Door 3500JPY / From Out Of Niigata 2500JPY / Under18 FREE!

live:
LIEVEN MARTENS MOANA
TYPHONIAN HIGHLIFE

dj:
PAL

more info: experimental rooms
まずはじめに自己紹介をお願いいたします。

こんにちは、PALです。1986年生まれ新潟在住で、お米作りと並行して曲作りをしてます。

新潟のインディペンデント・レーベルHeliostructionより最新作『Heimia / Calea』が先日にリリースされましたね。おめでとうございます!楽曲毎に異なる質感、アプローチで空間的でありながら様々な形状を想起させる音響体験ができ、個人的にも非常に愛聴させて頂いています。今作は一体どのようにして制作されたのでしょうか?

ありがとうございます!Heliostructionからオファーをいただいたのが昨年末で、作り始めたのは今年の2月からでした。真冬に部屋にこもり1ヶ月ほどかけて完成しました。手持ちのハードウェアサンプラー(ELEKTRON Octatrack)を活かしきれてないな、もっと使い込んでみよう。そんな思いから制作をスタートさせました。ちょうどその頃、1950〜70年代辺りの現地録音された民族音楽のレコードを収集し始めたので、先ずは気になる音をサンプリングしそれを加工、全体の根っこになるように随処に這わせました。楽曲毎の質感が違うのは、そうなんです、曲毎に手法を変えてるからです。根っからの飽き性でして(笑)。例えば、ドラムマシンやシンセやエフェクターなどを真っ当に使った曲や、職場の加工場の音をフィールドレコーディングしそれのみを使った曲(お気に入りは折りたたみ机のキャスターの哀愁漂う鳴き声みたいな音!)。DAWで作った音をランダムに走らせて、その素材を一旦サンプラーに落とし込み手元に置き、オートマティスムのように指の動きにお任せして一発録りした曲などなど。大半の時間は好きな音に近づくように微調整の繰り返し。空間のバランスにもとても気を配りましたね。密林、洞窟、水辺、昼、夜、大きい箱、小さい箱、縦横斜めといったいろんな想像を膨らませました。

今作を制作するにあたり、コンセプトやインスパイアされたものについてはいかがでしょうか?

書物から創作のきっかけをもらうことが多く、今作はジム・デコーン著『ドラッグ・シャーマニズム』から多大な影響と貴重すぎる知恵を与えてもらいました。この本は、シャーマンの儀式に使われる幻覚植物を著者自らが採集(栽培)から摂取まで...では終わらずに、適切な使用量から保存方法まで記載されてる開拓精神たっぷりの一冊なのです(メディテーションの作法が導入部ってあたりがまた最高!)。元々興味のあったアニミズムや収集した古いレコードたちがこの本へとすぅーっと繋がっていき、生まれる遥か以前に正確な地図もないまま辺境を分け入った録音技師たちの結晶が巡り巡っていまレコードとして手元にある、僕の出したい音の質感が一緒になったらどうなるだろう?現代版の民族音楽ともいえるのでは?これがコンセプトです。あと、カセットテープが主な媒体なので、カセットデッキにも想いを馳せました。根っこから吸い上げられ蒸散し、仄かに漂う霊性・呪術・祈祷の気配に惑わされて、片面を終えガチャっとリバースされたと思ったらいつの間にやらまたガチャっと最初に戻っている、8曲入りだけど30分で一曲のようなイメージも添えてあります。

ちなみに作品タイトルの"Heimia / Calea"はどのような意味なのでしょうか?

Heimia(ヘイミア)は摂取すると幻聴を起こすミソハギ科の幻覚植物の名。Calea(カレルア)はオアハカ州のチョンタル族だけが儀式に使うと云われてる幻覚成分を含む植物の名です。A面は聴覚、B面は視覚に作用するイメージで。

ひとつに囚われない様々な音楽的背景を感じるのですが、ご自身はどのようなアーティストに影響または共感を感じますか?

DJ Klockさんから計り知れないほどの影響を受けてます。高校生の時に初めて聴きそれからずっともう。ヒップホップ、アブストラクト、エレクトロニカ、アンビエント、ハウス、どこを横断してもどの音を聴いてもKlockさんらしさがあって、今でも新鮮。凄いですよね。

音楽活動の他にライフワークとして山登りをされていらっしゃいますが、創作活動との結びつきについてはいかがでしょうか?インスパイアされるものがありましたら教えて下さい。

山に入ると地上でホコリを被ってしまい鈍ってしまった感覚を取り戻せるんです。耳と鼻とか特に。小さな物音にも普段なら気づかないような匂いにも敏感になったりします。歩いてる最中の何かを考えていて何も考えてない空の状態、禅に興味を持ち出してからこれを禅的ハイクって勝手に呼んでるのですが、山へ浸ってるとすんなり辿り着ける。地上ではこれなかなか難しくて。僕はテント泊が好きで好きでしょうがない人間でして、虫の音(たまに鹿の切ない鳴き声)だけの静かな夜などは、体と心が自然と溶け込んでいくような一体感が味わえます。おすすめは少し肌寒めの2泊以上のテント泊です。そんな山での拡張された感覚・体験が制作に活かされていると感じてます。

10月14日のER#26ではDJとしてご出演下さりますね。この日はどのようなプレイとなりそうでしょうか?

古い民族音楽のレコード、フィールドレコーディング、自分の曲などを織り交ぜちょっと変わったDJ(ブリコラージュ)を行う予定です!

monotop-architektやiwwiwe.など、ソロ以外にも他者との制作や活動もされていらっしゃいますが、最近の動きについてはいかがですか?

そろそろ活動のプラットフォームとなるようなレーベルを作れたらなーって考えてます。気だけは早くて既に名前は決まってるんですが(笑)、長い目でお待ちいただけたら嬉しいです。

地元である新潟での活動についてはいかがでしょうか?また今後プレイしてみたい土地についても教えて下さい。

experimental rooms 星野さんや意欲的なイベンター・音楽家の皆さんのおかげで大都市へ行かずとも国内・世界各地のアーティストたちが新潟へ足を運んでくれて、日々素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれてます。僕もその体験を端緒にdjや音楽を作り始めた人でして、他の土地で育ったなら踏み入れてもいなかったはず。ありがたい環境と常々感じてます。 今後プレイしてみたい土地はやっぱり山奥ですね〜。キャンプインでみんなが寝静まるまでひっそり小さな音を出し続けるとか、洞窟で演奏も良さそうですよね。天然のリヴァーブ楽しそう!共演する外国のアーティストに「ユニークサウンド!」って言われることがあるので、外国で演奏したらどんな反応だろうってのも気になるところ。東南アジア、南米、中東辺りで出来たら最高ですね。

最近のお気に入りのアーティストや作品などがありましたら教えて下さい。

Kaloan、JASSS、ZULI、フィールドレコーディングもの。2017年ヤラレタ!コリャマイッタ!作品は、坂本龍一 『async』、FIS and Rob Thorne 『Clear Stones』。

今後の活動予定について教えて下さい。

しばらくはインプットに専念します。山を歩いたり泊まったり、川を下ったり読書したり。満ち満ちたら次の作品を作り始めたいですね。

最後にリスナーの皆さんへ一言お願いします!

少々偏りがちな音楽を真面目にゆっくりじっくり作っております。先ずは14日のexperimental room #26にて素敵なゲスト、素敵な空間と共にその端っこでもついばんで頂けたら嬉しいです!どうぞ健康第一で!



INTERVIEW in October 2017
TEXT by Masato Hoshino