MINAMO
FEATURE 032

ニューヨークの12KやオーストラリアのROOM40をはじめ、国内外の様々なレーベルから毎作、私たちにエレクトロ・アコースティック/音響の新たなる可能性を提示し続けている世界に誇るべき日本のカルテット、minamo(ミナモ)。インプロヴィゼーションで紡がれていくアコースティックにたゆたう美しい音の揺らぎ、緩やかにレイヤードされていく電子音のスケープ、ミニマルな心地良さ、そしてその場の空気感を全て内包するアンビエントな息遣い…。作品のみならず、そのライヴ・パフォーマンスにも高い評価を集める、そんな彼らが遂に新潟に上陸します!今回はバンド結成当時からのキーとも言える杉本佳一氏と安永哲郎氏によるデュオ編成での演奏。初となる新潟ライヴに向けて、あれこれとインタビューさせて頂きました!minamoをずっと待ち焦がれていた方も、これを機に初めて触れる方も、是非ご覧下さい!




HOMETOWN
Tokyo, JP

LABEL
12K (US)
APESTAARTJE (US)
Quakebasket (US)
ROOM40 (AU)
MR.MUTT (IT)
ESQUILO (PT)
360°(JP)
CUBIC MUSIC (JP)
HEADZ (JP)

MEMBER
Keiichi Sugimoto (FILFLA, FOURCOLOR, VEGPHER, FONICA, CUBIC MUSIC)
Tetsuro Yasunaga (HELLL, CAT SAND, VOIMA)
Yuichiro Iwashita
Namiko Sasamoto

WEB
MINAMO

VIDEO

Live at Provo, Sapporo


Live at Jiyu-Gakuen, Tokyo


Live at Yogen-ji temple, Tokyo



experimental room #11

2012 11 24 SATURDAY

万代島旧水揚場2F「シェアキッチン」

Open 18:00 / Start 18:30

Adv 2000JPY / Door 2500JPY /
From out of Niigata 1500JPY /
Under 18 FREE!

live:
FilFla
Minamo
Moskitoo
福島諭

more info:
experimental rooms
結成されて十数年以上となりますが、まずは振り返って頂いてminamoとしての バンドの成り立ちについて教えて頂けますでしょうか?

安永哲郎(以下Y):確か1998年、僕と杉本さんは音楽の趣味が近いことをきっかけに、ネットを介して知り合いました。直後に僕の通っていた大学の教室でギターやリズム・ボックスを使ったセッションをしたのが最初の二人での演奏です。実はその後1年くらいはメールで近況を伝え合う程度だったのですが、杉本さんからレーベル(今のCubic Music)を立ち上げてイベントをやってみたいと相談を受け、一緒に都内の会場を探すので再び頻繁に逢うようになりました。会場を当時開店したばかりの恵比寿neuf cafe(後にカフェブームの旗手を担うようになるお店)に決め、友人でまだ音源を発表する前のWorld's End GirlfriendにDJを頼んだところで、ライヴ・アクトを誰にしよう?と考えた結果、自分たちでやるのが一番ということになって結成したのがminamoです。当時は杉本さんがFMVのラップトップ、僕がKORGのD8というHDRをメインにベルやパーカッションを交えつつの即興を披露しました。その時の演奏が1stアルバム『wakka』のベースなっています。その後、以前からCubic Musicのスタッフだった笹本さんと、過去にPianaとユニットを組んでいた岩下君が加わって今のカルテットになりました。

結成当初、何かコンセプトなどはいかがでしたでしょうか?

Y:具体的に話すことは無く、常に互いの音を通して対話するような感覚とそれぞれの「いいかんじ」を大事にするというぼんやりしたものだったと思います。当時自分が思い描いていたのは、minamo という名前の通り、二人で広い湖の表面をぼんやりと座って見つめているようなイメージでした。

今までに様々な国内外のレーベルから作品が発表されていますが、様々な国か らのリリースについてはいかがでしょうか?何かエピソードなどありましたら教 えて下さい。

Y:『wakka』をリリースした頃はとにかく手探りで、通っていたレコード屋さんに急に電話をして持ち込み委託させてもらうということを繰り返していました。そんな折り、当時はシカゴに住んでいて『ユリイカ』を発表したばかりのジム・オルークが来日。そのバンド・メンバーとして、今はWilcoのグレン・コッツェとともにツイン・ドラマーとしてやってきたティム・バーンズがロス・アプソンで偶然『wakka』を買ってくれたんです。その噂をHEADZの方から聞いて小躍りしていたところに、なんとティム本人から「CD気に入ったよ。友だちのMatmosも好きだって」と連絡がありました。そこからの交流が海外の音楽シーンを身近に感じる直接的なきっかけとなり、長い時間を経て12KやRoom40、Mr.Mutt、Esquiloなど海外との活発な交流が生まれていったように思います。

最新作となる6thアルバム『Documental』はオーストラリアのレーベルROOM40か らリリースされましたね。毎作制作の過程に興味が尽きないのですが、今作はど のようにして制作されたのでしょうか?

Y:KORGが開発した1bit DSDフォーマットという高品質の録音環境があります。当時その製品を担当していた友人から紹介され、アコースティックと電子音の新たな混ぜ合わせ方への挑戦になると感じた僕らは、三鷹のライヴ・スペース「おんがくのじかん」のご好意で貸し切りの状態にしました。まるで音の実験室のように楽器を並べ、マイクとの距離感や演奏者の挙動などあらゆる空気の振動を意識しつつ長時間に渡ってライヴ・レコーディングしたドキュメンタリーが『Documental』というアルバムになっています。

続けてレーベルのお話でいうとニューヨークの12kからもいくつかリリースされ ています。先日、12k所属の国内外アーティストが結集してminamoとしても出演 されたフェス"Quiet October"が開催されましたが、いかがでしたでしょうか?

Y:12kは設立から13年が経過しましたが、今なお多くの発見をもたらしてくれるレーベルです。当初のミニマルなプレゼンテーションから最近のオーガニックなプレゼンスに至るまで、好きな音をそれが好きだからという理由で最高のパッケージに仕立て上げ続けるテイラー・デュプリーの姿勢には感服します。それはどんな饒舌なメッセージよりも強固なものですし、その証拠に先日の二日間に渡るフェスでもお客さんと演奏者が常に一体となって音楽に対して誠実で忠実な空気が生まれていました。

私(筆者)は12kのジャパン・ツアーという事で松本公演の方を拝見させて頂き ました。サウンドはそれぞれストイックなまでに昇華された卓越性を感じつつ も、皆さんとても和やかでどこかファミリー的で非常にステキだなぁという印象 を持ったのですが、所属されているご自身はいかがですか?

Y:いつの間にか日本人アーティストの割合も増え、12kジャパンチームという俗称も生まれていますからね。去年のテイラー・デュプリー来日時にはSmall Colorのお二人の自宅で「ファミリー」の食事会が催されたり、離れていても常に互いの体温を感じるような関係性ができていると思います。 そしてそれはとてもオープンなものだと思っています。

今までにローレンス・イングリッシュやTapeとのコラボレーション作品をリ リースされていますが、国外のアーティストとの共作についてはいかがですか?

Y:ローレンスとTapeのコラボは、それぞれまったく違う手法で制作されました。 まずTapeとは、二度目の来日時に湾岸スタジオに全員で入り、セッションの中からコンポジションを浮き彫りにさせるようなプロセスでレコーディングをしました。お互いの手法をミックスさせたような、新鮮かつリラックスした空気の中で多くのケミストリーが生まれたのを覚えています。 一方、ローレンスとの場合は日本で録音したminamoの膨大なセッション音源をオーストラリアで再構築する作業が中心でした。自分たちの演奏をどのようにローレンスが料理するかを楽しみに待っていた時間が印象的です。

minamoは「日本のエレクトロ・アコースティックのパイオニア」と度々紹介さ れる事があると思うのですが、ご自身にとってはズバリ、エレクトロ・アコース ティックとはどのようなものでしょうか?

Y:何なんでしょうね?まず思うのは、そう紹介される時の「エレクトロ・アコースティック」もだいぶ誤った解釈のように思います。電子音とアコースティック楽器を一緒に演奏するからというような意味合いで使われているんじゃないでしょうか。本来は「電子音響」のことですよね。だとするとパイオニアなんて言葉は明らかに間違いだし、大野松雄さん、塩谷宏さん、黛敏郎さん、湯浅譲二さん…あらゆる先達の方々に顔向けできない。もっと歴史に学びながら謙虚に音楽と向き合いたいし、その意味ではどう呼ばれてもminamoはminamoでしかないとしか言えないです。

新潟でのライブは今回初との事ですが、どのようなライブ・パフォーマンスに なる予定でしょうか?

Y:今回は杉本&安永のデュオによる即興を予定しています。最近のminamoは過渡期にありまして、ラップトップは使わずに、ダイナミクスへと目を凝らし、じっくりと耳を澄ませつつアコースティックとリスニングの探求のための濃密な時間を作りたいと思っています。

それでは最後にminamoを長らく待っていた新潟のファンの皆さんにメッセージ をお願いします!

Y:minamoとして初の新潟、とても楽しみです。新潟はノイズや音響への度量が広いという噂なので、思い切った演奏に集中できそうな予感に期待を膨らませています。せっかくの機会なのでライブ後もよかったら話しかけてくださいー。わりといい子たちです。



INTERVIEW in Oct 2012
TEXT by Masato Hoshino